Jupyter Notebook(および後継の JupyterLab)は、Python のコードと実行結果・グラフ・解説文を 同じファイルに残せる 対話型の実行環境です。データ分析の探索的な作業に向いており、本サイトの「まずは動かしてみる」局面で頻繁に登場します。
ここでは Jupyter の最小構成での導入から、保存・共有時の注意点までを通しでまとめます。
目次
- Notebook と Lab、どちらを使うか
- インストール
- 起動方法
- セルの種類と基本操作
- 最初の 1 ノート
- 数式を Markdown セルに書く
- 保存と共有
- バージョン管理のコツ
- チェックポイントと自動保存
- カーネル(実行環境)の選択
Notebook と Lab、どちらを使うか
呼び方が紛らわしいので最初に整理します。
| 名称 | 位置づけ | 用途 |
|---|---|---|
| Jupyter Notebook(古典) | 旧来の Web UI | レガシーな教材で頻出 |
| Notebook 7 | 新世代の薄い UI | シンプルに 1 ノートを開くだけなら十分 |
| JupyterLab | 多機能 IDE 寄り UI | ファイルツリー・ターミナルも統合 |
| VSCode の Jupyter 拡張 | VSCode 内で .ipynb を開く | 既に VSCode を使っているなら最有力 |
学習開始のおすすめは VSCode 内で開く方法 です。エディタを 1 つに統一できるためです。本記事ではブラウザ版(JupyterLab)と VSCode 版の両方を扱います。
インストール
仮想環境を作ってから入れます。
mkdir nb-study && cd nb-studypython -m venv .venvsource .venv/bin/activate # Windows は .venv\Scripts\Activate.ps1pip install --upgrade pippip install jupyterlab pandas matplotlibJupyterLab を入れると、Notebook 7(jupyter notebook コマンド)も同時に使える状態になります。
起動方法
A. ブラウザで JupyterLab
jupyter labブラウザが自動で開き、http://localhost:8888/lab が表示されます。左ペインのファイルツリーから New → Notebook で新規ノートブックを作成します。
シングルファイルだけで開きたいときは Notebook 7 を使います。
jupyter notebookB. VSCode で開く
- VSCode の拡張機能で Jupyter(Microsoft)を入れる
- ワークスペースで新しい
.ipynbファイルを作成、または既存の.ipynbを開く - 右上の「カーネル」欄から、プロジェクト内の venv を選ぶ
セルの実行は Shift + Enter です。VSCode 上でも、ブラウザ版とほぼ同じ感覚で使えます。
セルの種類と基本操作
ノートブックは「セル」の集まりです。覚えるのは 2 種類だけです。
| セルの種類 | 用途 | 起動 |
|---|---|---|
| Code セル | Python のコード | Shift + Enter で実行 |
| Markdown セル | 解説文・見出し・数式 | Shift + Enter で描画 |
セルの追加は、選択中のセル下に新規を作る B、上に作る A を覚えれば十分です(コマンドモードのキーバインド)。
最初の 1 ノート
CSV を読み込んでヒストグラムを描く、最小例を示します。
import pandas as pdimport matplotlib.pyplot as plt
df = pd.read_csv("https://raw.githubusercontent.com/mwaskom/seaborn-data/master/iris.csv")df.head()セル末尾の式は 自動的に表示 されるのがノートブックの便利な点です。print を書かなくても表が描画されます。
次のセルで簡単なグラフを描きます。
fig, ax = plt.subplots(figsize=(6, 3))df["sepal_length"].hist(ax=ax, bins=20)ax.set_title("Sepal length distribution")ax.set_xlabel("length (cm)")plt.show()%matplotlib inline の指定はモダンな環境では不要です。
数式を Markdown セルに書く
$...$ で囲むとインライン、$$...$$ でブロックの数式が描画されます。LaTeX 記法がそのまま使えます。
リターンの定義は $r_t = \dfrac{P_t - P_{t-1}}{P_{t-1}}$ と書けます。保存と共有
ノートブックは .ipynb ファイルで、コード・出力・図・メタデータ が JSON 形式で 1 つに束ねられます。共有のしかたは大きく 4 通りです。
| 方法 | 向いている場面 |
|---|---|
.ipynb をそのまま渡す | 同じ環境を持っている相手 |
| GitHub にコミットして公開 | レビューや教材公開 |
nbconvert で HTML に書き出す | 環境のない相手に結果だけ見せる |
| Google Colab に上げる | クラウドで開いてもらう |
HTML への書き出しは次の 1 行です。
jupyter nbconvert --to html notebook.ipynbバージョン管理のコツ
.ipynb は 出力データ(画像・表)もファイル内に保存される ため、Git に入れると差分が膨らみがちです。よくある工夫を 2 つ示します。
1. コミット前に出力をクリアする
JupyterLab では Edit → Clear All Outputs を実行してから保存します。VSCode の Jupyter: Clear All Outputs でも同じです。
2. nbstripout で自動化する
pip install nbstripoutnbstripout --install.git/config にフィルタが登録され、コミット時に自動で出力が除去されます。共著で扱うリポジトリではほぼ必須です。
チェックポイントと自動保存
JupyterLab は数分おきに自動保存します。.ipynb_checkpoints/ というフォルダに直前の状態が残るため、誤って消した場合の戻り先になります。.gitignore に 必ず登録 します。
.ipynb_checkpoints/カーネル(実行環境)の選択
ノートブックは「カーネル」と呼ばれる Python プロセスで動きます。複数プロジェクトを掛け持ちするときは、プロジェクトごとに別 venv → 別カーネルにするのが安全です。
venv を別カーネルとして登録するには、次のコマンドを使います。
pip install ipykernelpython -m ipykernel install --user --name pykabu-study --display-name "Python (pykabu)"JupyterLab のカーネル選択メニューに Python (pykabu) が現れます。
まとめ
- 学習開始のおすすめは VSCode 内で
.ipynbを開く 構成 - セルの種類は Code / Markdown の 2 種類だけ覚えれば十分
- ノートブックの数式は LaTeX 記法をそのまま書ける
- Git 管理時は 出力をクリア するか nbstripout を使う
- プロジェクトごとに venv → ipykernel で別カーネル登録すると衝突を避けやすい